経営のリアル

弁当屋の仕入れ先は5系統——肉と調味料は卸・米は農家直・塩砂糖はコストコという使い分けと、肉の卸を変えた話

この記事の結論

弁当屋を3年やってきて、仕入れ先は「一番安い1社を探す」のではなく、品目ごとに定位置を決める形に落ち着きました。肉と調味料は卸(商社)、野菜は卸と地元スーパーで半々、米は農家から玄米で直接、大量に使う塩・砂糖はコストコ。足りないものはスーパーや直売所、ネット通販で買い足します。

この記事では5系統の使い分けの理由と、支払い条件が合わずに肉の卸業者を変えた話、そして「自分の目で選べない」という今の体制の正直な弱点を書きます。

5系統
仕入れ先の役割分担
週2〜4
1社あたりの仕入れ頻度
半々
野菜の卸:スーパー比率

前提:仕入れ先は「最安の1社」ではなく「役割分担」で決めている

人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を経営して3年目になります。原価率35%を守る値付け(この記事)を成立させるうえで、仕入れ先の選び方は値付けと同じくらい効いてきます。

基本方針はシンプルで、その時に安くて質の良いものを選ぶ。ただし毎回ゼロから探すわけではなく、品目ごとの「定位置」が決まっています。全体像はこの表の通りです。

品目主な仕入れ先理由
肉・基本の調味料 卸(商社) 配達してくれる・量が多い・安定供給
野菜 卸と地元スーパーで半々 大量・重いものは卸、買い足しはスーパー
農家から直接(玄米・年間契約) 価格の安定・使う分だけ精米できる
塩・砂糖など大量に使う調味料 コストコ 商社より安くて質のいいものが多い
不足分・スポット品 業務用スーパー・直売所・ネット通販 その時に安くて質の良いものを選ぶ

仕入れの頻度は、1社あたり週に2〜4回です。ここから、それぞれの系統をなぜそう使い分けているのかを書いていきます。

卸——「重いもの」「大量なもの」「手に入りにくいもの」は配達に任せる

卸を使う最大の理由は配達してくれることです。だから卸に頼むのは、重たいものがメインになります。

弁当屋はネギ・玉ねぎ・人参のような定番野菜を毎回大量に使います。これを自分で買い出しに行くと、運搬だけでかなりの時間と体力を持っていかれます。配達してもらえるなら、その時間を仕込みや事務作業に回せます。

もうひとつ、卸には「地方ではなかなか手に入らないものを取り寄せられる」という役割もあります。私の店では紫キャベツやエディブルフラワーのような、地元のスーパーには置いていない食材も使いますが、これらは卸ルートだから安定して確保できています。

肉と基本の調味料も卸です。使う量が多く、毎回の買い出しでは現実的に回らないためです。

米は農家から玄米で仕入れて、使う分だけ精米する

米は農家から直接、年間契約のトン単位で仕入れています。この契約が「令和のコメ不足」の急騰から店を守ってくれた話は仕入れ値高騰の記事に書きました。

ここで補足したいのは、玄米のまま仕入れていることです。精米した状態ではなく玄米で保管し、使う分だけその都度精米しています。

理由は味です。精米から時間が経つと臭みが出ます。弁当は体積でも原価でも約半分が米なので、ここの品質が落ちると弁当全体の印象が落ちます。都度精米は正直手間ですが、この手間は削らないと決めています。

コストコ——塩・砂糖は商社より安い。そして息抜きになる

意外に思われるかもしれませんが、塩・砂糖のような大量に使う調味料はコストコで仕入れています。商社経由より安くて、質のいいものが多いからです。「卸=業務用だから一番安い」とは限らない、というのは3年やってみての実感です。

そしてもうひとつ、正直な理由として、コストコに行くこと自体が気分転換になっています。広い売り場を歩きながら「これは店で使えるか」と考える時間は、仕入れという業務でありながらエンターテインメント的な息抜きです。仕入れ専用カードをコストコカードにしている話は事業用カードの記事に書きました。

スーパー・直売所・ネット通販は「買い足しとスポット」

地元スーパーの役割は、足りないものの買い足しです。野菜は卸と地元スーパーで半々くらいの比率になっています。卸の納品だけでは日々の生産量の変動に追いつかないことがあるので、不足分をスーパーで埋める運用です。

そのほか、業務スーパーなどの業務用食品スーパー、JAの直売所、ネット通販も使います。ここは定位置というより「その時に安くて質の良いものがあれば選ぶ」枠です。発注量の決め方そのものに課題を感じている話は発注管理の記事に書いています。

肉の卸業者を変えた話——お金の条件より「時間」が合わなかった

今の使い分けに落ち着くまでに、肉の卸業者を一度変えています(いわゆる転注です)。

もともと取引していた卸は、支払いが現金のみでした。しかも納品に来るのが朝の一番忙しい時間帯。仕込みの手を止めて現金を用意して受け取る、というのを毎回やることになります。

「掛け払いで扱ってもらえないか」と相談しました。答えは「ダメです」でした。それで、別の卸に切り替えることを決めました。

切り替えた後になって、元の卸から「ごめんなさい、掛けでもいいので」と連絡が来ました。悩みましたが、お断りしました。こちらが困っているときに動いてもらえなかったという事実は、条件が後から変わっても消えないからです。

結果的に、この転注は一石二鳥でした。新しい卸とは密に連絡が取れる関係になり、発注も相談も格段にやりやすくなったのです。私は仕組み化を看板にしている人間ですが(GASで注文管理を自動化した話など)、仕組みも大事だけれど、商売は結局、人と人だと実感したエピソードです。

正直な弱点——鮮度と部位を、自分の目で選べない

今の体制に満足しているかというと、正直、弱点もあります。鮮度の確保です。

卸からの仕入れは、自分で現物を選べません。届いた野菜を見て「鮮度がイマイチだな」と思うものが混ざっていることがあります。肉も同じで、ロースを頼んでいるのに、肩ロースに近い脂身の多いものが届くことがあります。届くまで確認ができないのです。

本当は、全部自分の目で選んで買いたい。でも、毎回すべての食材を自分で買い出しに行く時間はありませんし、運搬のコストもかかります。時間効率とコストを天秤にかけて、今の体制に落ち着いている——というのが正直なところです。

まとめ:定位置を決めると、仕入れは迷わなくなる

仕入れ先5系統の使い分けを振り返ると、判断基準は3つに集約されます。重い・大量・手に入りにくいものは配達してくれる卸へ。品質を落とせない核(米)は生産者と直接契約。それ以外はその時に安くて質の良いところで。この定位置が決まってから、発注のたびに迷うことがなくなりました。

ただし定位置は固定ではありません。塩・砂糖がコストコに移ったように、「卸より安くて質がいい」が見つかれば入れ替えます。卸業者そのものも、条件が合わなければ変えていい。3年かけてそう思えるようになりました。

そして、どれだけ仕組みを整えても、最後は担当者と密に連絡が取れるかどうかが効いてきます。仕入れは価格の話であると同時に、人との商売の話でもある——というのが今の結論です。

よくある質問FAQ

弁当屋の仕入れ先はいくつくらい持つのがいいですか?

数そのものより「品目ごとの定位置」を決めることが大事だと思います。私の店は卸(商社)・農家直・コストコ・地元スーパー・直売所やネット通販の5系統で、肉と調味料は卸、米は農家、大量に使う塩・砂糖はコストコ、と役割を分けています。定位置が決まっていると発注のたびに迷わなくなり、1社に依存しない安心感もあります。

卸業者から仕入れるデメリットは何ですか?

現物を自分の目で選べないことです。野菜の鮮度がイマイチだなと思うものが届いたり、ロースを頼んだのに肩ロースに近い脂身の多い肉が来たりと、届くまで品質の確認ができません。本当は自分で選んで買いたいのですが、配達してもらえる時間効率とコストを考えて、今の体制に落ち着いています。

飲食店の仕入れにコストコは使えますか?

私の店では塩・砂糖など大量に使う調味料の仕入れ先として使っています。商社経由より安く、質のいいものが多いのが理由です。加えて、広い売り場を歩くこと自体が気分転換になるので、エンターテインメント的な息抜きを兼ねた仕入れになっています。小商いを長く続けるには、こういう楽しさも案外大事だと思っています。

米を玄米で仕入れるメリットは何ですか?

精米したての状態で使えることです。精米から時間が経つと臭みが出るため、私の店では農家から玄米のまま仕入れて、使う分だけその都度精米しています。手間はかかりますが、弁当の半分は米なので、ここの品質は落とせないと考えています。

条件の合わない卸業者は変えてもいいのでしょうか?

私は変えました。以前の肉の卸は現金払いのみで、納品も朝の一番忙しい時間帯。掛け払いを相談しても断られたため転注しました。その後「掛けでもいいので」と再提案がありましたが、お断りしました。新しい卸とは密に連絡が取れる関係になり、結果的に一石二鳥でした。条件面だけでなく、コミュニケーションの取りやすさも含めて判断していいと思います。