経営のリアル

弁当屋の原価率の目安は30%、実際は35%——800円台の弁当と1,500円からの別注・仕出しで原価率がどう変わるか

この記事の結論

弁当は800〜1,000円、惣菜は100円〜。原価率は30%を目標にしていますが、見栄えを考えると食材を足してしまい、実際の平均は35%前後です。

値付けの基本方針は「大手・スーパーと価格で戦わない」こと。付加価値と仕込みの丁寧さで差をつける戦略です。看板商品の設定では想定外の誤算もありました。正直に書きます。

800〜1,000円
弁当の価格帯
目標30%
目標原価率
実態35%
実際の平均原価率

前提:価格で大手に勝てないと最初から割り切った

人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を営んでいます(詳しくはこの人について)。開業前から一つだけ決めていたことがありました。大手チェーンやスーパーの惣菜コーナーと、価格で争わないということです。

規模が違いすぎます。仕入れ価格も違う。同じ土俵で戦えば負けます。だから価格帯をあえて高く設定し、「安さで選ぶお客さん」ではなく「価値で選ぶお客さん」に絞る方針にしました。

最初の値付け:ネットで原価率を調べ、大手より高く設定した

開業時、値付けの基準にしたのはネットで調べた「飲食店の一般的な原価率」です。目安として30%前後が多く語られていたので、それをベースに逆算しました。

出てきた価格が競合の大手より高くなっても気にしませんでした。価格が高い分、仕込みを丁寧にして味で差をつける——それが自分の店にできる付加価値だと判断したからです。地元の食材を丁寧に仕込み、大手にはできない手間をかける。この方針は今も変わっていません。

原価率の実態:目標30%、現実35%のギャップ

目標原価率は30%です。ただ正直に言うと、なかなか達成できていません。

原因は「見栄え」です。弁当は見た目が買う理由に直結します。盛り付けを見て「なんか少ない」と感じると、つい食材を足してしまう。その積み重ねで、高い商品では原価率が40%を超えることもあります。平均で35%前後に収めることを意識していますが、常にせめぎあっています。

これは失敗というより「お客さんに選ばれ続けるためのコスト」と捉えています。見栄えを犠牲にして原価率を下げれば数字は改善しますが、それで客足が遠のいては意味がありません。

弁当屋の原価率の目安と相場:一般論は30%、実際は35〜40%に寄る

「弁当屋の原価率はどのくらいが目安か」「相場はいくらか」とよく聞かれます。一般に語られる目安・相場は30%前後で、私も開業時はこの数字を基準に値付けしました。ただ3年営んでみると、私の店の実際の平均は35%前後に落ち着いています。

商品の種類で分けると、こういう感覚です。

  • 通常の弁当・惣菜……30〜35%を目安に組み立てる
  • 高級弁当・見栄え重視の商品……35〜40%になることが多い

つまり「目安30%・相場30〜35%」という数字自体は正しいのですが、見栄えを取ると実際は35〜40%帯に寄る——というのが、原価を毎日見ている立場からの正直なところです。数字を目安どおりに近づけたいなら、まず調味料まで測って原価計算する仕組みを持つのが、私の場合は一番の近道でした。

原価率を「毎月見られる状態」にしておく

目安の数字を知ることより、自分の店の実際の数字を毎月見られるほうが大事だと考えています。私の場合は、仕入れの支払いを事業用カードに寄せて、その明細を会計ソフトに自動で取り込む形にしています。手で入力する場面をほとんど無くしたので、月末に原価率を確認する作業がそれほど負担になりません(経費管理の中身はこちら)。

実際に使っているのは、仕入れの支払いを分ける事業用カード2枚の使い分けと、明細を取り込むマネーフォワード クラウド会計です。売上側はAirレジから日次で見ています。原価率は「計算するもの」ではなく「勝手に出てくるもの」にしておくと、値付けを見直す判断が早くなります。

別注弁当・仕出しの原価率:40%を超えることもあるが、そもそも%で見ていない

ここまでは通常の弁当の話です。1,500円からお受けしている別注弁当やオードブルになると、話が変わります。

まず数字だけ言うと、別注は場合によっては40%を超えることもあります。通常の弁当が35%前後ですから、単価が上がるほど原価率も上がる方向です。

ただ、ここが一番正直に書いておきたいところなのですが——別注については、そもそも原価率(%)で管理していません。考えているのは「いくら儲けとして出すか」という金額のほうです。

理由は、注文のされ方にあります。別注は「この弁当をください」ではなく、「2,000円で作って」という頼まれ方をします。金額が先に決まっているので、原価率を先に置いても意味がありません。先に確保したい利益額を決めて、残りをどう使うかという順番になります。

「2,000円で作って」と言われたら、ベースからいくら分足すかを考える

実際の組み立ては、ゼロから献立を起こすわけではありません。普段の弁当をベースに置いて、そこにいくら分を足していくか——ここが毎回の議論になります。

面白いもので、同じ2,000円でも中身は相手によって変わります。付き合いの深い常連さんの注文は、かなり豪華に仕上がります。逆に、初回のお客さんや細かいリクエストが多い注文は、正直に言うと原価率は多少低くなる傾向があります。

贔屓をしているという話ではありません。先に利益額を確保してから残りを食材に回すという順番で組んでいるので、やり取りや個別対応に手間がかかるほど、その分を金額側で見ておく必要があり、結果として食材に回せる割合が下がるという構造です。逆に、勝手を分かってくれている相手は余計な手間がかからないぶん、そのまま食材に回せる。原価率の差は、手間の差がそのまま出たものだと考えています。

だから「別注の原価率は何%が正解か」と聞かれると、答えようがないというのが本当のところです。%は結果として出てくる数字であって、こちらが置いている基準ではない。通常の弁当は%で管理し、別注は金額で管理する——同じ店の中で、2つの見方を使い分けています。

なお、別注が集中するのはお盆や年末年始などの大型連休です。そのときの受け方や締切の決め方は大型連休の繁忙期をどう回しているかにまとめました。

値上げの経験:「もっと上げていい」と言われた

物価の上昇に合わせて、少しずつ値上げをしてきました。一度に大きく上げるのではなく、小幅を複数回というやり方です。

反応は予想より穏やかでした。「仕方ないよね」という声が多く、中には「もっと上げてもいいのに」と言っていただくことも。正直、思っていた以上に地域に愛されていると実感した瞬間でした。価格で選ばれているのではなく、店そのものを選んでいただいている手ごたえです。

競合の価格:参考にするが、追いかけない

近隣の競合店の価格は一応確認しています。ただ、深追いはしていません。仕入れルートが違えば原価が違う。得意なメニューが違えば売り方が違う。同じ土俵で比較しても意味がないからです。

参考にするのは「この地域でお客さんが弁当にいくらまで払うか」という相場感のみ。それを超えているかどうかを確認する程度です。

看板商品の誤算:「ついで買い」は起きなかった

値付けで一番後悔しているのが、看板商品の設定です。

狙いはこうでした。看板商品の原価率をあえて高めに設定して「お得感」を演出する。お客さんが看板商品を目当てに来て、惣菜を1〜2品ついで買いする流れができれば、トータルの売上が増える——という仮説です。

結果は想定と違いました。看板商品だけを買って帰るお客さんが多かったのです。セット販売(看板商品+惣菜をまとめて安く)も試しましたが、「余計には買わない」と決めているお客さんには響きませんでした。

看板商品を入れ替えることも考えましたが、長年のお客さんに定着した商品を変えることへの抵抗もあります。今も次の手を模索中です。商売の難しさの核心にあるのは、「お客さんは自分の想定通りには動かない」ということだと思っています。

よくある質問FAQ

弁当屋の適正な原価率はどのくらいですか?

一般的には30%前後が目安とされています。私は30%を目標にしていますが、見栄えを考えて食材を足すことが多く、実際の平均は35%前後です。高い商品では40%になることもあります。

弁当屋の原価率の相場・目安は30%と35%のどちらですか?

一般に語られる目安・相場は30%前後で、値付けの出発点としてはこの数字が妥当です。ただ実際に営業すると、見栄えのために食材を足す分で私の店の平均は35%前後に上がります。目安は30%、実態は35%前後、と分けて考えるのが現実的です。

高級弁当の原価率はどのくらいが目安ですか?

見栄えや素材を重視する高級弁当は、通常の弁当より原価率が高くなり、私の店では35〜40%になることが多いです。原価率を抑えるより、その価格でも選ばれる付加価値を作れるかどうかで判断しています。

大手やスーパーの弁当と価格で競合しないためにどうしていますか?

仕込みを丁寧にして味の質を上げ、大手にはない付加価値で勝負しています。価格帯をあえて大手より高く設定することで、安さで選ばない客層に絞っています。

値上げに対するお客様の反応はどうでしたか?

「仕方ない」という声が多い一方、「もっと上げてもいい」と言っていただくこともあります。思っていた以上に地域に受け入れられているという実感があります。

看板商品の設定で失敗したことはありますか?

原価率を高めにしたお得な看板商品を作りましたが、看板商品だけ購入してそれ以外を買わないお客様が多く、想定していたプラスアルファ購入の流れが作れませんでした。セット販売も試しましたが、余計には買わないと決めているお客様には響きませんでした。

競合店の価格はどのくらい意識しますか?

参考程度に意識していますが、仕入れルートや得意分野が違うので深追いはしていません。他店の価格に合わせるより、自分の店の原価率と付加価値のバランスを優先しています。

別注弁当やオードブルの原価率はどのくらいですか?

通常の弁当が35%前後なのに対し、別注は場合によっては40%を超えることもあります。ただし私は別注については原価率(%)で管理していません。「2,000円で作って」というように金額が先に決まる注文なので、先に確保したい利益額を決めて、残りを食材にどう使うかという順番で考えています。%は結果として出てくる数字であって、こちらが置いている基準ではありません。

「2,000円で作って」と言われたとき、どうやって中身を決めていますか?

ゼロから献立を起こすのではなく、普段の弁当をベースに置いて、そこにいくら分を足していくかを毎回話し合って決めます。同じ金額でも中身は相手によって変わり、付き合いの深い常連さんの注文はかなり豪華に仕上がります。逆に個別のやり取りや対応に手間がかかる注文は、その手間を金額側で見ておく必要があるため、結果として食材に回せる割合が下がります。