弁当・惣菜のラベルに載せているのは、品名・価格・店名(販売者名)と、食品表示としての原材料・添加物・内容量・消費期限・保存方法・製造者です。
項目を並べるだけなら難しくありません。実際に手が止まるのは別のところでした。原材料を「重量の多い順」に並べること、そして書くべきことを全部書いたらラベルに収まらなくなったこと。この2つが、3年やってきて一番苦労した点です。毎日ラベルを貼っている立場から、制度の解説ではなく実際にどこで詰まったかを書きます。
前提:制度を調べるより、貼り続けて分かったこと
人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を営んでいます(詳しくはこの人について)。開業3年目で、味は専属の調理担当に任せ、私は主に仕組みと経営を見ています。飲食店営業許可とそうざい製造業許可の両方を取り、店頭と委託販売の両方で販売しています。
食品表示について、開業前にひととおり調べました。ただ正直に言うと、調べて分かったことより、実際に毎日貼りはじめてから分かったことのほうが圧倒的に多かったです。この記事は後者だけを書きます。
なお、表示のルールは食品表示法で定められており、細かい基準は品目や表示面積によって変わります。最終的な判断は所轄の保健所に確認してください。以下は「うちの場合はこうなった」という一例です。
うちのラベルに実際に載せている項目
1枚のラベルに入れているのは、次のとおりです。
- 品名……何の商品か
- 価格
- 店名(販売者名)
- 原材料……重量の多い順に並べる
- 添加物
- 内容量
- 消費期限
- 保存方法
- 製造者
- QRコード……こちらは表示義務ではなく、お店を知ってもらうための販促目的
QRコード以外は、基本的に載せないという選択肢がないものです。だからこそ、後で触れるように「全部書いたら物理的に入らない」という問題が起きます。
これを毎日ゼロから作るのは現実的ではないので、Excel VBAでラベル出力を自動化しました。ただし自動化はあくまで「決まった内容を速く正確に出す」ための話で、何を書くかを決める作業は自動化できません。そこが今回の主題です。
一番迷ったのは「原材料を重量の多い順に書く」ところ
食品表示で最も手が止まったのは、ここでした。原材料は、使っている重量が多い順に並べなければいけません。
これが、感覚ではまったく決められないのです。見た目の印象と実際の重量は違います。彩りで目立つものが実は少量だったり、地味な素材のほうが重かったりする。「たぶんこの順番だろう」で書くわけにいかないのに、正確な順番は頭の中には無い——ここで詰まりました。
やったことは単純です。エクセルに使っている分量をすべて書き出し、ソートして並べ替える。その結果を表示用の文言にまとめました。
面倒に聞こえますが、一度作ってしまえば以後は並び替えの結果を使うだけになります。しかも副次的な効果がありました。原価計算のために調味料まで測るようにしていたので、分量のデータはもともと手元にあったのです。原価管理のために測っていた数字が、そのまま食品表示にも使えた——これは想定していなかった収穫でした。
これから始める方に一つだけ言えるとすれば、レシピの分量を数字で持っているかどうかで、この作業の重さがまったく変わります。どんぶり勘定のままだと、表示のたびに毎回悩むことになります。
日替わりでもアレルゲン表示が回るのは、メニューを回しているから
「日替わり弁当のアレルゲン表示は大変では」とよく聞かれます。実際にはそこまでではありません。理由は表示の工夫ではなく、メニューの組み方のほうにあります。
日替わりといっても、基本的には同じものを極力回しているからです。毎日新しい献立を作っているわけではなく、決まった中から選んで組み合わせている。だから表示すべき対象も、無限には増えません。
私の店の場合、メニューは全部で50種ほどあります。逆に言えば、その50種を一度すべて網羅してデータにしてしまえば、あとは呼び出すだけです。日々ゼロから考える作業は発生しません。
これは品数を「毎日ローテーションが組める数」に整えていることの、思わぬ副産物でした。メニューを絞ることの効果は仕込みの効率だけだと思っていましたが、表示の管理コストにも直結していたわけです。逆に、毎日まったく違うものを出す店だったら、アレルゲン表示は相当な負担になっていたはずです。
消費期限は当日——「おいしく食べられるのは当日」だから
消費期限は当日中に設定しています。
決め方の根拠は、日持ちの限界を探る方向ではありませんでした。おいしく召し上がっていただけるのは当日だ、という考えがまずあって、それに合わせて期限を置いています。
この設定は、作り方そのものとも噛み合っています。夏場の衛生管理でも書きましたが、うちは小ロットでこまめに作る方式で、そもそも長く持たせる前提の作り方をしていません。期限だけ長く書いても、作り方が伴わなければ意味がないと考えています。
指摘を受けたのは文字サイズ——全部書いたら、入らなかった
表示で実際に引っかかったのは、内容の間違いではなく文字のサイズでした。
きっかけはメーカーから仕入れた漬物です。仕入れたものを弁当に入れる場合、その原材料や添加物も表示に反映させる必要があります。ところがその漬物には、材料と添加物がかなり多く入っていました。
正直に全部書きました。すると文字数が一気に増えて、ラベルに収まらなくなったのです。
そこで、枠に収まるように設定を変えました。結果どうなったかというと、文字が基準より小さくなってしまいました。表示は「書いてあればいい」のではなく、読める大きさで書かれていることまで含めて基準になっています。これは駄目だと判断しました。
つまり、正直に全部書こうとした結果、基準を満たせなくなるという状況です。内容を削れば嘘になるし、文字を小さくすれば基準を割る。ラベルのサイズは固定にしていたので、逃げ場がありませんでした。
解決策:漬物を自分で作って、添加物を減らした
最終的にどうしたか。漬物を自分で作ることにしました。
自作すれば入れる材料はこちらで決められるので、添加物が減り、表示すべき文字数そのものが減りました。結果、文字サイズを落とさずにラベルへ収まるようになりました。
ただし、いいことばかりではありません。手間は確実に増えました。買えば済んでいたものを、自分たちで仕込む工程が増えたわけです。
ここは今も判断のしどころだと思っている
この一件は、こう整理できると思っています。ラベルのサイズを固定にせず柔軟に変えられるようにしておくか、それとも自作して添加物を減らす方向を選ぶか——どちらを取るかという話です。
ラベルを大きくできれば、仕入れ品をそのまま使えて手間は増えません。一方、自作を選べば手間は増えますが、添加物が少ないこと自体が健康志向のお客さんに響く可能性があります。
うちは結果的に後者になりましたが、それが唯一の正解だとは思っていません。文字サイズという、一見すると些細な制約から、商品そのものの作り方の話にまで発展した——表示は表示だけの問題ではない、というのが正直な実感です。
委託販売先ごとに、ラベルフォームを分けている
委託販売をしていると、もう一つ手間が増えます。販売者名を委託先ごとに変える必要があるためです。
そのため、ラベルのフォームは委託先ごとにそれぞれ作っています。ただし、変わるのはあくまで販売者名の部分で、表示ルールの仕様そのものはほぼ変わりません。中身は同じで、器だけを差し替えるイメージです。
ここも、フォームを分けたうえで自動出力の仕組みに載せてしまえば、日々の負担にはなりません。手作業のままだと、貼り間違いが起きる場所だと思います。
「書かなくていいもの」を探すより、「必ず要るもの」を押さえる
最後に、これから表示に取り組む方へ。
「これは表示しなくてもいいのでは」と考えたくなる場面はあります。ただ私の実感としては、その方向で悩むのはあまり意味がありませんでした。絶対に表示しなければならない項目は決まっていて、その数はそれほど多くありません。そこさえ押さえてしまえば、大きく外すことはない——これが3年やってみての結論です。
むしろ時間をかける価値があるのは、それを毎日ミスなく出し続ける形にすることのほうです。分量を数字で持ち、メニューを回せる数に絞り、一度データにして呼び出せるようにする。表示の負担は、表示そのものよりその手前の設計で決まると感じています。
まとめ
- 載せているのは……品名・価格・店名(販売者名)+原材料・添加物・内容量・消費期限・保存方法・製造者。ほかに販促用のQRコード
- 一番迷うのは原材料の順番……重量の多い順。感覚では決められないので、分量をエクセルに書き出してソートする
- アレルゲンは一度網羅すれば終わり……メニューを回しているから対象は増えない。50種ほどをデータ化すれば以後は呼び出すだけ
- 消費期限は当日……おいしく食べられるのは当日だという考えに合わせた
- 引っかかったのは文字サイズ……仕入れ品の添加物が多く、全部書いたら収まらず、縮めたら基準を割った
- 解決は自作=添加物を減らす……ただし手間は増える。ラベルサイズの柔軟性を取るか、自作を取るかは判断のしどころ
- 委託先ごとにフォームを分ける……変わるのは販売者名だけで、ルールの仕様は同じ
食品表示は、調べれば「何を書くか」はすぐ分かります。でも実際に詰まるのは、その内容を、決まった大きさの紙に、毎日間違いなく載せ続けられるかのほうでした。制度の理解より、手元の設計の話だったというのが、やってみての正直なところです。
よくある質問FAQ
弁当や惣菜の食品表示ラベルには何を書けばいいですか?
私の店のラベルには、品名・価格・店名(販売者名)に加えて、食品表示として原材料・添加物・内容量・消費期限・保存方法・製造者を入れています。ほかにお店のQRコードも載せていますが、これは表示義務とは別の販促目的です。表示すべき項目は決まっているので、まず必ず必要なものを押さえるのが先だと考えています。具体的な基準は所轄の保健所に確認するのが確実です。
原材料を書く順番はどうやって決めますか?
原材料は重量の多い順に並べる必要があり、ここが私にとって一番迷うところでした。感覚では順番がつけられないので、エクセルに使っている分量をすべて書き出し、ソートして並べ替えたものを表示用にまとめています。一度この表を作ってしまえば、あとは並び替えの結果を使うだけになります。
日替わり弁当のアレルゲン表示はどう管理していますか?
日替わりといっても、基本的には同じメニューを極力回しているので、実際には管理しきれる量に収まります。私の店ではメニューが50種ほどあり、それを一度すべて網羅してデータにしてしまえば、あとは呼び出すだけです。毎日ゼロから考えているわけではありません。
弁当の消費期限はどうやって決めましたか?
当日中に設定しています。理由は、おいしく召し上がっていただけるのは当日だと考えているからです。日持ちを延ばす方向ではなく、その日のうちに食べていただく前提で作る、という考え方に沿って決めました。
食品表示で指摘を受けたことはありますか?
あります。文字のサイズです。メーカーから仕入れた漬物に材料や添加物が多く、それをすべて記載したところ文字数が増えてラベルに収まらなくなりました。枠に収める設定にしたら文字が基準より小さくなってしまい、これは駄目だと判断しました。最終的には漬物を自分で作って添加物を減らすことで収まりましたが、そのぶん手間は増えています。