会社員から個人事業主になった1年目は、健康保険・国民年金・住民税が一気に来て手持ちがかなり削られました。会社がいかに多くのことを肩代わりしてくれていたか、身をもって知った年でした。
ただし、これは「知っていれば準備できた話」でもあります。仕組みをわかっていれば驚かずに済む。この記事では、知識ゼロで突入した私が実際に経験した順番で書きます。
深く考えずに開業した
私は人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を営んでいます(詳しくはこの人について)。もともとは製造業のサラリーマンでした。開業前にやっておけばよかったことは別の記事に書きましたが、税金まわりもそのひとつです。
「何とかしなきゃ」という思いで勢いよく開業したので、社会保険まわりをほとんど調べていませんでした。会社を辞めると何が変わるか、ざっくりとはわかっていましたが、具体的な金額のイメージがまったくなかったのです。
会社が半分払ってくれていた、という事実
会社員のときは、給与から毎月「健康保険料」と「厚生年金保険料」が天引きされていました。でも実はそれ、会社が同じ金額をもう一枚、裏で払ってくれていたのです。自分が払っているのは本来の保険料の半分だった、ということを辞めてから知りました。
個人事業主になると、国民健康保険と国民年金に切り替わります。国民健康保険は前年の所得をもとに計算される仕組みで、会社員時代の給与所得が基準になります。国民年金は所得に関係なく定額です。どちらも全額を自分で払う。今まで「これくらい」と思っていた感覚が、根本からずれていました。
「節税」というキーワードをよく耳にする理由が、ここで初めて実感として理解できました。稼ぎからこれだけ出ていくなら、そりゃ対策を考えるわけです。
住民税の仕組みを知らなかった
さらに追い打ちをかけたのが住民税です。
住民税は「前年の所得」に対して翌年に課税される仕組みです。会社員のときは給与から毎月天引きされるのでそれほど意識しませんが、個人事業主になると自分で納付書を見て振り込むことになります。
問題は、開業1年目は「前年=会社員時代」ということです。個人事業主としての稼ぎがまだ安定していない時期に、サラリーマン時代の所得をベースにした住民税が丸ごと来ます。稼ぎは減っているのに、請求は去年の水準。この時間のズレが、開業1年目の家計を直撃しました。
国民健康保険料も同じく前年所得ベースで計算されるため、1年目はこの二つが重なります。加えて国民年金の定額負担も始まる。三つが同時に来るのが、開業1年目の現実です。
車を売った
手持ちからかなりの額が出ていきました。もともと乗っていた車は、収入が安定してきたら手放そうと考えていたものです。身分不相応だと自覚していました。ただ、この税金のインパクトが、売却を前倒しするきっかけのひとつになったのは事実です。
「開業したら稼ぎが増える」という前提で動いていると、こういう落とし穴にはまります。開業直後はむしろ出ていくお金が増える時期です。売上が安定するまでの期間と、税金・保険料の支出をセットで見ておく必要がありました。開業資金の話はこちらの記事にも書いています。
2年目から一気に楽になった
1年目の苦しさは、裏を返せば「時間のズレ」が原因です。ということは、個人事業主としての所得が基準になる2年目以降は、状況が変わります。
私の場合、開業初年度は売上がまだ安定しておらず、所得は会社員時代より大幅に下がりました。そのため2年目からの国民健康保険料と住民税は、最低水準に近い金額まで下がりました。支払い額の変化は体感として明確で、「1年目さえ乗り越えれば」というのが実感です。
逆に言えば、1年目の資金不足で廃業するケースも多いのだろうと思います。開業前に「最初の1年は税金・保険料がこれくらい来る」という試算をしておくことを、今なら強くすすめます。
今やっていること:経費化と小規模企業共済
税負担を減らすために有効なのは、経費にできるものはきちんと経費にすることです。経費が増えると課税所得が下がり、翌年の住民税・国民健康保険料の両方に効きます。経費管理の実務についてはこちらの記事に書きました。
また、今年から小規模企業共済に少額で加入しました。個人事業主や小規模企業の経営者向けの積立制度で、掛け金の全額が所得控除になります。月1,000円から始められるので、まず入ってみて仕組みを理解するというのが私のやり方です。
付加年金や確定申告と社会保険料控除の関係など、まだ把握しきれていないことも正直あります。税金まわりは奥が深く、私も勉強しながら対応している途中です。
まとめ
会社員から個人事業主になると、健康保険・国民年金・住民税の三つが一気に変わります。特に住民税は「前年所得課税」という仕組み上、1年目が最も苦しくなります。これを知っているかどうかで、開業前の準備がまったく変わります。
知識ゼロで突入した私の体験が、これから開業を考えている人の「最初の1年をどう乗り越えるか」の参考になれば幸いです。
よくある質問FAQ
個人事業主になると健康保険はどう変わりますか?
会社員のときは会社が保険料の約半額を負担してくれていますが、個人事業主になると全額を自分で払う国民健康保険に切り替わります。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、開業1年目は会社員時代の所得をベースにした高い保険料が来ます。
個人事業主になった1年目に住民税が高くなるのはなぜですか?
住民税は「前年の所得」に対して翌年に課税される仕組みです。会社員から個人事業主に転身した年は、前年(会社員時代)の給与所得をもとに計算されます。そのため、個人事業主として収入がまだ少ない時期でも、サラリーマン時代の高い所得に対する住民税が請求されます。
国民年金が苦しい場合、免除申請はすべきですか?
払えない状況であれば申請する価値はあります。ただし、免除を受けた期間は将来の年金受給額が減ります(全額免除の場合、その期間分は半額相当の受給額になります)。私は手持ちで対応できたため申請しませんでしたが、生活が厳しい場合は未払いのままにするより免除申請の方が確実です。
小規模企業共済とはどんな制度ですか?
個人事業主や小規模企業の経営者が加入できる積立式の退職金制度です。月1,000円から積み立てでき、掛け金の全額が所得控除になるため節税効果があります。私は今年から少額で始めました。まず加入してみることで節税の実感が得られると思います。