経営のリアル

値上げして3ヶ月。売上は維持できたが利益は改善していない——弁当屋の正直な現在地

この記事の結論

3ヶ月前に値上げしました。正解だったかどうか、まだわかりません。

客層は変わりました。売上の金額はほぼ同じ水準に戻っています。でも利益率は改善していません。原材料費の上昇が止まらないからです。

結論が出る前に書きます。途中経過の一次情報として読んでください。

3年間
値上げを先延ばしにした
10〜100
値上げ幅(商品によって異なる)
3ヶ月
経過(まだ答えは出ていない)

3年間、怖くて上げられなかった

私は人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を2店舗営んでいます(詳しくはこの人について)。開業から3年近く、価格はほぼ据え置きでした。

理由を一言で言えば、客が離れるのが怖かったからです。地方の小さな商売で客が一人減る重さは、都市部のそれとは違います。「もう少し様子を見よう」を繰り返しているうちに、気づけば3年が経っていました。

その間も仕入れ価格は少しずつ上がっていました。鶏肉、米、包装資材、光熱費。ひとつひとつは小さな変化でも、積み重なれば原価率を確実に押し上げます。自分の労働時間あたりの収益を計算したとき、その数字を見てもまだ私は動けませんでした。

鶏肉の仕入れ価格が限界になって、共同経営者と話した

踏み切ったきっかけは、鶏肉でした。弁当の主菜で最も使う食材です。その仕入れ価格がある時期から明らかに上がり始め、「これはもう吸収できない」という水準になりました。

そのタイミングで、共同経営者と話しました。「もう上げるしかないんじゃないか」という話は、どちらからともなく出てきました。ふたりとも、同じ重さを感じていたのだと思います。

決断したのは、その夜でした。

背景にはほかにもありました。食材全般の価格上昇、包装資材と光熱費の値上がり、そして近隣の飲食店が少しずつ価格改定を始めていたこと。「うちだけ安いまま」という状態が続いていることへの違和感も、じわじわと積み重なっていました。

告知は店内POPとSNS。謝罪調にはしなかった

価格改定の告知は、店内POPと値段表の差し替え、SNSでの事前告知を組み合わせました。

文面は「誠に申し訳ございません」という謝罪調にしませんでした。仕入れ価格が上がっていること、品質を落とさずに続けるための改定であること、それだけを一言添えて、あとは事実を淡々と伝えました。必要以上に小さくなることはしたくなかったのです。

3ヶ月経った今の正直な状態

値上げ直後は、客数が落ちました。予想していたこととはいえ、実際に売上が下がる日が続くのは精神的にきつかったです。「下げようか」と思った日も、正直あります。

3ヶ月経って、少し状況が変わってきました。

客層が変わった実感があります。作る量は変えていないのに、日によって残る量が変わりました。値下げを求める動きをしていた客層が一部離れ、価格より利便性や品質を重視する方が残ってきた、という感覚があります。

売上の金額としては、ほぼ同水準に戻ってきています。単価が上がった分、数量が落ちてトントンになった形です。

ただし、利益率は改善していません。

値上げしている間も、原材料費は上がり続けています。売上が戻っても、コストの上昇がそれを上回っているのが現状です。「値上げして良くなった」と言える状態ではまだありません。

それでも下げようとは思っていない

「正解だったか」の答えはまだ出ていません。でも価格を戻そうとは思っていません。

理由はシンプルです。下げることは問題を解決しません。原材料費が上がっているのに価格を戻せば、以前よりさらに薄い利益で売ることになるだけです。「今が辛いから下げる」は、辛さを先送りするだけで、構造を変えることにはならない。

3年間先延ばしにして学んだことがあるとすれば、怖くて動けない期間も確実にコストだということです。安い価格のまま耐えた3年間も、静かに体力を削っていました。

今は「上げてよかった」とも「失敗だった」とも言えません。ただ、下げて解決できる問題ではないことだけはわかっています。

追記予定

この記事は現在進行中の経験として書いています。半年後を目処に、結果をもとに追記する予定です。

よくある質問FAQ

飲食店が値上げすると客数は減りますか?

私の場合、値上げ直後は客数が減りました。ただし3ヶ月経って、作る量は同じでも「残る量」が変わってきました。客層が変化した実感があります。値下げを求めるお客さんが離れ、価格より通いやすさや品質を重視する方が残った、という感覚です。

値上げして売上は回復しましたか?

売上の金額としてはほぼ同水準に戻っています。単価が上がった分、数量が減ってトントンになった形です。ただし同期間に原材料費・光熱費も上がり続けているため、利益率は値上げ前より改善していません。値上げしたから黒字化した、という単純な話にはなっていません。

値上げを告知するとき、どんな伝え方をしましたか?

店内POPと値段表の差し替え、SNSでの事前告知を組み合わせました。「誠に申し訳ございません」という謝罪調にはしませんでした。仕入れ価格が上がっていること、品質を維持するための改定であることを一言添えて、あとは事実を淡々と伝えました。

3年間値上げできなかった理由は何ですか?

客が離れるのが怖かったからです。地方の小商いで客が一人減れば売上への影響は小さくありません。「もう少し様子を見よう」を繰り返しているうちに3年が経ちました。踏み切れたのは、鶏肉をはじめとした仕入れ価格の上昇が限界に達し、共同経営者と話し合って「上げるしかない」という結論に至ったからです。

値上げ後に「下げようか」と迷ったことはありますか?

あります。値上げ直後に客数が落ちたとき、正直に迷いました。ただ、下げても原材料費の問題は解決しない。下げることは問題を解決するのではなく、先送りするだけだと考えて、踏みとどまっています。今もまだ「正解だったか」の答えは出ていません。