ホワイトボードへの書き写しと電卓での容器計算をやめ、GAS+Googleスプレッドシート+専用HTMLで生産指示をデジタル化しました。40インチのモニターに表示することで、スタッフが確認のためにキッチン内をうろうろしなくなり、作業の迷いがなくなりました。
数字で言えば、2時間あたり20個以上の生産数増加(体感)。それ以上に大きかったのは、新人でも一度教えれば即日動けるようになったことです。
前提:弁当屋の生産現場はアナログのかたまりだった
私は人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を2店舗経営しています(詳しくはこの人について)。元々は製造業の生産技術職だったこともあり、飲食の現場のアナログさには開業当初から違和感がありました。
特に毎朝の生産指示まわりは、無駄な手間が積み重なっていました。この記事はその解消までの実録です。
導入前:ノート→ホワイトボード→電卓という3段階の手間
デジタル化する前の生産指示の流れはこうでした。
- 前日または当日朝、注文内容をもとにノートで生産数を考える
- その内容をキッチンのホワイトボードに書き写す
- スタッフがホワイトボードを見るためにキッチン内に足を運び、容器の必要数を電卓で計算する
問題はさらにありました。「この商品にはどの容器を使う」という情報はホワイトボードに書かれていなかったのです。容器の種類は各スタッフの経験と記憶に依存していました。結果、入社直後のスタッフは容器を用意できないという状況が常態化していました。
問題の本質:「暗黙知」が新人の壁になっていた
ホワイトボードには「○○弁当 30個」と書いてあっても、「その弁当にはどの容器を何個使うか」は書いていない。これは熟練スタッフには自明でも、新人にはまったく分からない情報です。
毎朝ベテランスタッフに確認しに行くか、間違えて作り直すかのどちらかです。小さな飲食店でこれが続くと、ベテランへの依存が高まり、育てる側も育てられる側も消耗します。私が採用・定着で苦労した原因のひとつもここにありました。
導入した仕組み:GAS+スプレッドシート+専用HTML+40インチモニター
構成はシンプルです。
| 役割 | 使ったもの |
|---|---|
| データ管理 | Googleスプレッドシート |
| データ取得・加工 | Google Apps Script(GAS) |
| 表示画面 | 専用HTML |
| 表示デバイス | 40インチモニター(キッチン設置) |
スプレッドシートに注文数を入力すると、GASが容器の必要数などを計算して専用HTMLの画面に反映される仕組みです。
画面に表示している情報
ホワイトボードには載っていなかった情報も含め、以下を一画面で表示しています。
- 商品名・生産数量
- どこへ持っていく商品か(予約・取り置き・配達の区別)
- 使用する容器の種類と必要数(自動計算)
- 生産順序
- 注意点・備考
これらを40インチのモニターに一覧表示することで、スタッフはその場から動かずに全情報を把握できます。電卓も不要です。
専用HTML画面はAIと一緒に作った
「こんな画面を作りたい」というイメージをAIに投げ、出てきた雛形を実際の運用に合わせて添削しながら仕上げました。完全にゼロから自分だけで書いたわけではありません。
プログラミングの知識がある程度あれば、AIが出すコードを読んで修正できます。「やりたいことを言語化する力」があれば、AIが大部分を補ってくれます。こういうツールを作るハードルは、以前と比べて格段に下がったと実感しています。
導入後:スタッフがうろうろしなくなった
一番目に見えて変わったのは、スタッフがキッチン内を確認のために歩き回らなくなったことです。画面を一度見れば全情報が揃っているので、迷いなく作業に入れます。
生産数の増加は正確に計測したわけではありませんが、同じ時間で20個以上は増えた感覚があります。迷い・移動・電卓計算という「作業以外の時間」がなくなったことが積み重なっている結果です。
もうひとつの変化が、新人の即戦力化です。容器の種類と数が画面に出るので、経験がなくても「画面の通りに準備する」だけで動けます。一度使い方を教えれば、その日から生産準備に入ってもらえます。
現在の課題:GASのレスポンスとデータベース化
現状の正直な課題は、GAS経由だと初期表示のレスポンスが遅い点です。データベースへの移行を検討中ですが、一度表示してしまえば頻繁に画面を切り替えることはないため、現時点では運用上の支障はほぼありません。緊急度は低く、環境は引き続き整えていく予定です。
リリース後に軽微なバグが出て都度修正するのも実態です。気づかないまま本番稼働してしまい、スタッフからの指摘で直すケースもあります。小さな店でシステムを自作する以上、ある程度は致し方ないことだと割り切っています。
よくある質問FAQ
生産指示のデジタル化に必要なものは何ですか?
私の場合はGAS・Googleスプレッドシート・専用HTML・大型モニターの4つです。データをスプレッドシートで管理し、GAS経由で専用HTMLに表示する構成にしました。大型モニターは40インチのものをキッチンに設置しています。プログラミングは必須ですが、今はAIに「こんな画面を作りたい」と投げれば雛形を作ってもらえるので、添削しながら完成させることができます。
プログラミングの知識がなくても生産指示画面は作れますか?
AIを活用すれば知識がなくても取り組みやすくなりました。私自身もAIに画面のイメージを伝えて雛形を出してもらい、実際の運用に合わせて添削しながら作り上げました。完全にゼロ知識では難しいですが、「やりたいこと」を言語化できれば、AIが大部分を補ってくれる時代です。
ホワイトボードからデジタル化して一番変わったことは何ですか?
スタッフが「確認のためにうろうろしなくなった」ことです。以前はホワイトボードを見るためにキッチン内を移動し、容器の数を電卓で計算していました。デジタル化後は画面を一度見れば必要な情報がすべて揃うため、移動と計算の手間がなくなりました。副次効果として、新人でも一度教えれば即日対応できるようになっています。
GASとスプレッドシートで生産指示を管理するデメリットはありますか?
GAS経由だと画面の初期表示にレスポンスの遅さを感じる点です。私の場合は現在データベースへの移行を検討しています。ただし一度表示してしまえば頻繁に切り替えることはないため、現時点では緊急度は低く運用上の支障はほぼありません。