飲食店の開業手続きは、全体的には比較的スムーズに終わりました。開業届は税務署の窓口で当日完了。保健所の営業許可も事前準備のおかげで軽微な指摘だけで済みました。
唯一ギリギリだったのが食品衛生責任者の資格です。「すぐ取れるだろう」と思っていたら会場が満席で、取得できたのは半年後でした。これだけは早めに動くべきでした。
前提:飲食店開業の手続きは思ったより多い
私は人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を開業しました(詳しくはこの人について)。飲食店の開業には、一般的な個人事業の手続きに加えて、食品を扱う業種特有の許認可が必要です。
この記事では、私が実際に対応した手続きを順番に振り返ります。難易度や所要時間の感覚も含めて正直に書きます。
開業時に対応した手続きの全体像
| 手続き | 難易度 | 所感 |
|---|---|---|
| 開業届・青色申告承認申請 | 易 | 税務署窓口で当日完了 |
| 食品衛生責任者の取得 | 易(取得自体は講習のみ) | 会場が満席で6か月待ち——要注意 |
| 保健所への営業許可申請 | 中 | 事前準備で指摘軽微 |
| 消防署への届け出 | — | 規模が小さく不要と判断された |
| 社会保険→国民健康保険の切り替え | 易 | 前職場が段取りしてくれた |
| 屋号付き銀行口座の開設 | 易 | ネット銀行で完結 |
開業届:税務署の窓口で当日完了
最初は何をどこに出せばいいか分からなかったので、直接税務署の窓口へ行きました。窓口で「開業したい」と伝えると、開業届の書類をその場でもらえます。記入方法も教えてもらいながらその場で書いて提出しました。
窓口で「青色申告と白色申告、どちらにしますか?」と聞かれました。事前に調べて青色申告の方が控除が大きいと把握していたので「青色でお願いします」と答えたところ、青色申告承認申請書も同時にもらえてその場で一緒に提出できました。
全体で30分もかからず完了しました。開業届自体は難しくありません。ただし青色申告を選ぶなら承認申請書も同日に出すのがポイントです(開業から2か月以内が期限)。青色申告の節税効果については別記事で詳しく書いています。
食品衛生責任者:「すぐ取れる」は甘かった——6か月待ちの実態
飲食店を営業するには、施設ごとに食品衛生責任者を1名置く必要があります。資格の取得方法は各都道府県が実施する1日の講習会を受講するだけです。試験はありません。
「講習を受けるだけなら開業直前でもいいか」と甘く見ていたのが失敗でした。いざ申し込もうとしたらどの会場も満席で、最短で取れる日程は半年後でした。ギリギリで間に合いましたが、冷や汗をかきました。
物件を決める前、開業を決意した段階で講習会を予約するのが正解です。飲食店の開業を考えているなら、これだけは今すぐ確認することをおすすめします。
保健所の営業許可申請:事前準備で指摘を最小化
飲食店の営業には保健所の許可が必要です。申請の流れはおおむね次の通りです。
- 保健所に事前相談(図面を持参)
- 店舗の工事・設備を整える
- 工事完了後に保健所の検査を受ける
- 許可証の交付
私は建築士の友人に同席してもらい、事前に図面を準備した上で相談に行きました。「どんな間取りにすればいいか」「必要な設備は何か」を事前に詰めていたので、本申請での指摘は軽微なものだけで済みました。
相談時に工事完了予定日と機材搬入完了予定日を伝え、検査の予約もその場で入れました。担当者から「工事が遅れそうな場合は柔軟に対応できます」と言っていただけたのも安心でした。
事前相談なしでぶっつけ本番だと、設備の追加工事が必要になって開業が遅れるリスクがあります。図面を持って事前相談に行くのは必須だと思います。
消防署:小規模店舗のため届け出不要だった
消防署への届け出が必要かどうか気になったので、図面を持って問い合わせをしました。店舗の規模が小さく従業員数も少ないということで、立ち入り検査なしで大丈夫との回答をいただきました。
ただしこれは私の店舗規模・構造によるものです。収容人数が多い店舗や、一定規模以上の厨房設備がある場合は消防署への届け出・検査が必要になります。「うちは不要だろう」と決めつけず、図面を持って事前確認することをおすすめします。
社会保険→国民健康保険の切り替え:前職場が段取りしてくれた
会社員から個人事業主になる際、社会保険から国民健康保険への切り替えが必要です。私の場合は前職場が退職手続きの一環として段取りをしてくれたので、その流れに沿って対応するだけで特に詰まることはありませんでした。
退職後14日以内に市区町村の窓口で手続きが必要です。前職場からの書類(健康保険資格喪失証明書など)を持参して窓口へ行きます。
屋号付き銀行口座:住信SBIとPayPay銀行を使い分け
事業用の口座は個人口座と分けて管理することを強くおすすめします。経費の把握や確定申告が格段に楽になります。
私は1店舗目と2店舗目で異なる銀行を選びました。
| 選んだ銀行 | 理由 | |
|---|---|---|
| 1店舗目 | 住信SBIネット銀行 | 振込回数が多くなると想定し、振込手数料を抑えたかった |
| 2店舗目 | PayPay銀行 | PayPay系列(銀行・カード・決済)でまとめたかった |
PayPay銀行を使って気づいた注意点があります。個人事業主の場合、口座名が「個人名+屋号」の形になります。このため、他社サービスの口座引き落とし設定で「法人口座は不可」と判断されて断られるケースがありました。PayPay系列の支払いには便利ですが、引き落とし口座として使えない場面がある点は把握しておく必要があります。
振り返り:これだけは早めにやっておくべきだった
全体を振り返ると、手続きそのものは比較的スムーズでした。ただ一つ反省があるとすれば食品衛生責任者の資格取得を後回しにしたことです。
開業を決めたその日に講習会の予約を入れる——これだけで開業スケジュールのリスクが大きく下がります。他の手続きは開業が近づいてから動いても間に合いますが、食品衛生責任者だけは例外です。
よくある質問FAQ
開業届はどこで・いつ出せばいいですか?
私は開業後すぐに直接税務署へ行きました。窓口で開業届の書類をもらい、その場で記入して提出できました。青色申告か白色申告かも窓口で確認されますので、事前に決めておくとその場でスムーズに手続きできます。青色申告を選ぶ場合は「青色申告承認申請書」も同時に提出します。
食品衛生責任者の資格はすぐに取れますか?
私の場合は甘く見ていて苦労しました。講習会は定期的に開催されていますが、どの会場も満席で取れたのは半年後でした。飲食店の開業を予定している方は、物件を決める前から講習会の予約を入れておくことを強くおすすめします。開業日程が決まっているのに資格が間に合わない、というのが一番避けたい事態です。
保健所の営業許可申請はどう準備すればいいですか?
私は建築士の友人に同席してもらい、事前に図面を準備して相談に行きました。事前準備をしっかりしていたおかげで指摘は軽微なものだけで済みました。工事完了後に検査の予約を入れる流れになるので、開業スケジュールに余裕を持たせておくことが大切です。工事の遅延にも柔軟に対応してもらえたのは助かりました。
個人事業主の屋号付き銀行口座はどこで開くのがいいですか?
私は1店舗目に住信SBIネット銀行、2店舗目にPayPay銀行を使っています。PayPay銀行は個人事業主の場合、口座名が「個人名+屋号」となるため、他社サービスの口座引き落としを断られることがあります。PayPay系列でまとめたい方には便利ですが、引き落とし口座として使えないケースがある点は事前に確認しておくことをおすすめします。