経営のリアル

作ったものを捨てるストレスから逃げたかった——弁当屋が廃棄率を5%まで下げた話

この記事の結論

廃棄を減らすために生産数を絞ると、今度は売り逃しが怖くなる。そのループから抜け出したのは、「生産を減らす」ではなく「夜に売れる販路を作る」という考え方の転換でした。

実店舗の売れ残りを夜遅くまで営業している委託販売先へ回すことで、廃棄率は感覚値で約5%程度まで下がっています。コストより、作ったものを自分で捨てる精神的なストレスが先に限界でした。

半年
廃棄が増え続けた期間
約5%
現在の廃棄率(感覚値)
ほぼ
売り切れる状態に

開業から半年:御祝儀が終わって廃棄が始まった

私は人口5万人未満の地方都市で弁当・惣菜店を2店舗営んでいます(詳しくはこの人について)。開業直後の半年は、いわゆる御祝儀客のおかげでほぼ毎日売り切れていました。廃棄という概念がほとんど存在しない時期です。

それが半年を過ぎたあたりから、売れ残る日が出てきました。最初は「今日はたまたま」と思っていましたが、頻度が上がるにつれて現実として向き合わざるを得なくなりました。

「減らせない」「減らしたくない」のループ

売れ残りが出ると、すぐに思いつく対策は生産数を減らすことです。ただ、そこには別の怖さがあります。

生産を絞ると売り逃しが増えます。そして「あの店、いつ行っても商品がない」というイメージがついてしまうことが怖かった。特に開業して間もない時期は、一度ついたネガティブなイメージを覆すのが難しいと感じていました。

その結果、売れ残りが嫌なのに生産を減らせないという状況が続きました。翌日に持ち越せない弁当は、閉店後にそのまま廃棄するしかありません。廃棄が増えていきました。

コストより先に、精神的な限界が来た

廃棄が増えることで当然コストがかかります。ただ、私が先に限界を感じたのはお金の問題ではありませんでした。

自分で作ったものを、自分でゴミ袋に入れて捨てる作業が、想像以上にきつかった。毎日それをやっていると、消耗します。「もっと減らしたい」という思いが本格的な行動につながったのは、この精神的なストレスが動機でした。

廃棄が増える日の共通点:雨とマルシェ

売れ残りが多い日には、ある程度パターンがありました。

ひとつは雨の日です。来客数が目に見えて落ちます。天気予報を前日に確認して生産数の目安にするようになりましたが、完全には読み切れません。

もうひとつは地域のマルシェやイベントがある日です。町のあちこちで飲食の出店があると、お客さんがそちらに流れます。イベント情報は自分で調べるようにしていましたが、すべてを把握することは現実的に無理でした。どちらの要因も、完全に防ぐ手段は今でも見つかっていません。

「生産を減らす」ではなく「夜に売れる場所を作る」

限界が来て、改めて問題を整理しました。なぜ売れ残るのか。

私の実店舗は夜まで販売していません。夕方には閉まります。つまり、夕方以降に弁当を買いたいお客さんに売れていないということでもあります。夜まで自分で販売しようにも、早朝から仕込みを始めて開店・調理・販売・片付けをこなして、さらに夜まで延長するのは体力的に無理でした。

そこで考え方を変えました。自分が夜まで売るのではなく、夜遅くまで営業している委託販売先を見つけて、実店舗の売れ残りをそこに回す形にすればいい。

委託販売先の探し方や条件交渉については別の記事で詳しく書いていますが、この動きの中で夜間営業の場所を意識的に選ぶようになりました。

結果:ほぼ売り切れる状態に、廃棄率は約5%

今は、実店舗で売れ残った分を夜まで営業している委託販売先へ回しています。それでも売れ残ることはゼロではありませんが、ほぼ売り切れる状態になりました。

廃棄率は感覚値で約5%程度です。正直に書くと、この数字は毎日きちんと記録して出したものではなく、体感に基づいた概算です。廃棄数を正確に把握してデータとして管理できる仕組みは、まだ整っていません。いずれ客観的な数字で判断できるようにしたいと考えています。

廃棄ゼロには、まだなっていない

廃棄率5%というのは「だいぶ改善した」という手応えであって、解決済みではありません。雨の日やイベントが重なった日は今でも廃棄が出ます。

委託先に回せる量にも限界があります。委託先の営業時間や陳列スペースの都合もあり、実店舗の売れ残りをすべて吸収できるわけではありません。

ただ、「廃棄が出ることへの精神的なストレス」は、仕組みができてから大幅に和らぎました。完全に解決していなくても、「やれることはやっている」という感覚が持てるだけで、毎日の消耗が違います。

まとめ:廃棄対策は「減らす」より「売り切る場所を増やす」で考えた

生産数を減らして廃棄を防ごうとすると、今度は売り逃しと品薄イメージが怖くなります。私はそのループを「販路を増やして夜まで売る」という発想で抜け出しました。

体力・時間・コスト、どれも有限です。自分が夜まで動けないなら、夜まで動いてくれる場所に乗せる。その発想の転換が、廃棄率を下げるより先に、毎日のストレスを減らしてくれました。

よくある質問FAQ

飲食店の廃棄ロスを減らすにはどうすればいいですか?

「生産数を減らす」か「販路を増やす」の2択で考えると整理しやすいです。私は生産を減らすと売り逃しや品薄のイメージにつながると判断し、夜遅くまで営業している委託販売先を見つけて実店舗の売れ残りを転売する形にしました。廃棄率は感覚値で約5%程度まで下がっています。

売り逃しと廃棄、どちらを優先して防ぐべきですか?

どちらも防ぎたいのが本音ですが、私は「いつ行っても商品がない店」というイメージを避けることを優先しました。その結果として廃棄が増えた時期があり、精神的なストレスが限界に近づいて対策を本格的に考え始めました。正解は店の立地・客層・体力によって変わります。

雨の日やイベントの日の売上減少はどう対策しましたか?

天気予報は前日に確認して生産数の目安にしています。マルシェや地域イベントの情報は自分で調べるようにしていましたが、すべてを把握するのは難しいのが実情です。売上減少そのものをゼロにする手段は見つかっていませんが、委託販売先での夜間販売が受け皿になることで廃棄への影響は小さくなりました。

開業直後の「御祝儀期間」が終わった後の売上減少はどう乗り越えましたか?

御祝儀が終わって売れ残りが出始めた時期は、正直かなりきつかったです。対策として生産数の調整と委託販売先の開拓を並行しました。最初から完璧に対処できたわけではなく、半年ほど試行錯誤しながら今の形になっています。開業直後の売上が続かないことは想定しておいた方がいいと思います。

廃棄率5%という数字はどうやって測っていますか?

正直に言うと、現時点では正確なデータではなく感覚値です。廃棄数を毎日記録して客観的に把握できる仕組みの整備を検討しています。小さな飲食店では廃棄の記録が後回しになりがちですが、判断の根拠にするためにもデータ化は必要だと感じています。